川のせせらぎが間近に聞こえる作業部屋。カリカリとペン入れの音が心地よくリズムを刻む。
彼
は、迫力ある戦国武将たちの描写と歴史ミステリーが話題の作品を連載中だ。「わかりやすく、面白く。子供の頃の自分に贈る感じで描いてます」とペンを止め外の景色を眺めた。作画する前に、ストーリーの舞台となる場所を必ず足で取材するのが彼の流儀。「人生経験がまだまだ少ない。俺には何もないというコンプレックスが歩かせるんです」
カメラとスケッチブックを肩にぶら下げて歩く。町から川のほとりまで、風を感じながら歩く。山道を登り、汗まみれで歩く。歴史の足跡をたどるように歩き続ける。見晴らし台があれば、必ず頂点に登り、眼下の町並みから遠く山々の果ての果てまで、主人公がいた時代の息吹を感じるように眺める。登場するキャラクターやその背景に、誰も描けないような絵やセルフを表現したい。その夢ために一歩一歩模索しながら歩くのだ。
時代の空気みたいなものを味わいたいんです。
主人公は、その時、そこで何を見たのか。
何を感じたのか。
どんな表情なのか。
実際に現場に立つ。
ストーリーはそこからはじまるんです
キャラクターやその背景に、誰も描けないような絵やセリフを表現したい。その夢のために一歩一歩模索しながら歩くのだ。次作は近未来の地球を描くSFに挑戦する。彼の歩みはまだまだ止まらない。
藤堂 裕(漫画家) 1979年生まれ。兵庫県出身。2009年故郷の淡路島を舞台にした『由良COLORS』でブレイク。同年より連載スタートした『S-最後の警官-』(小森陽一原作)はドラマ&映画化された。現在『信長を殺した男〜本能寺の変 431年目の真実〜』(原案・明智憲三郎)を好評連載中。 作品紹介 >
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