みんなでつくる、ブカツの教科書。

Vol.001 正しい食生活は、未来のトップアスリートを育てる

スポーツと栄養の関係を知ろう

はじめまして、大阪体育大学体育学部・大学院体育研究科教授の岡村浩嗣です。専門は運動栄養学、スポーツ栄養学です。製薬会社でスポーツ栄養に関する研究をはじめ、日本体育協会、日本オリンピック委員会などの活動を経験してきました。

カラダづくりと栄養の関わりは、切っても切り離せない密接な関係です。カラダは食べたものから作られ、そのカラダがスポーツの資本となるからです。特に中高生の成長期には、しっかりかつバランス良く栄養を摂取することが必要不可欠です。このコラムでは、なぜスポーツに栄養が重要なのか?競技力の向上と成長期のカラダづくりの観点から現場でサポートできるトピックスをお伝えしたいと思います。

3年間で終わるか、未来のアスリートになるか

トップアスリートほど、栄養に対する意識が高い傾向にあります。

例えば、42歳までヤクルトスワローズで活躍した古田敦也選手は、正しい生活や食事の習慣を身に付けていたそうです。競技力の向上はもちろん、競技を長く継続するためには、中高生から正しい食生活を身に付けることが大切です(図1)。成長期の早い段階から栄養の知識を身に付け正しい生活リズムや栄養補給を意識することが肝心です。

コンディショニング ワンポイント

長期的な視点でスポーツをとらえると、きちんとした食事はとても
重要です。トップアスリートほど、栄養を意識した食事をしています。

身体と食事のメカニズムを知ろう

中高生の成長期は、大人以上の食事量が必要

エネルギー消費のピークは、女子なら12~14歳、男子なら15~17歳前後。

つまりそこが、身体の成長のピークです。スポーツをすれば、身体に必要なエネルギー量はその分多くなりますから、この時期は大人以上のエネルギー量を摂取する必要があります。中高生アスリートに気を付けて欲しいことは、とにかく1日3食しっかり食べること。とくに重要なのは、朝食からきちんと食べることです。なぜなら、朝食は脳と体をウォームアップさせるからです。

1食を抜くと、理想の成長は見込めない

胃袋の容量は、満腹状態で1.5~2Lほどしかありません。

食べ物1L(≒1kg)あたりのカロリーは、約1,000kcalが標準。例えば、高校野球の選手だったら、1日に3,500~4,000kcalという摂取エネルギーが必要です。つまり1日に、3.5~4kgを食べなければいけないのです(図2)。仮に朝食を抜くと、昼食と夕食の2食で合計4,000kcal、つまり4kgの食事量が必要になります。食事中は水分も摂るので、水分を摂ってさらに一度に2kgというのは、食べられる量ではありません(図3)。

コンディショニング ワンポイント

朝昼晩の食事をきちんと摂ることが重要です。
3食欠かさずに食べる食習慣をつけましょう。

成長期に体重が増えるのは、アスリートとして成長の証

正しい食生活を身に付ける意識づけを

成長期であれば、体重が増えていくのは当たり前。

この時期には1日3食にこだわる必要はありません。体脂肪が異常に増えて肥満にならない限り、食べ過ぎということはないのです。成長期の中高生なら、サンドイッチやおにぎり、カロリーメイトなどを、補食として食べることがおすすめです(図4)。カラダづくりはスポーツ活動の土台となります。まずは正しい食生活を身に付ける意識づけからはじめてみてはいかがでしょうか。

コンディショニング ワンポイント

スポーツと栄養の関わりに興味を抱くことからはじめましょう。
1日3食に補食をプラスして、しっかり身体をつくりましょう。

岡村 浩嗣さん

  • 大阪体育大学 体育学部 大学院スポーツ科学研究科 学術博士/教授
  • 筑波大学大学院体育研究科卒。専門は、スポーツ栄養学、運動栄養学。

著書に「親子で学ぶスポーツ栄養(八千代出版)」「ジムに通う人の栄養学 スポーツ栄養学入門」(講談社 ブルーバックス)」「市民からアスリートまでのスポーツ栄養学(八千代出版)」

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