成熟したアスリートになるための基盤をつくる重要な時期のため、過度なトレーニングは成長の妨げになる場合もあるのです。その運動負荷を調整するのもコンディショニングです。
もちろん成長期を終えて、トップアスリートとして活躍するには筋肉のパワーが強い方が理想的です。ただし、成長期は"骨の成長"が最も重要です。筋肉が大きくなり過ぎると、骨の成長を抑制してしまうため、筋肉に過剰な負荷を与えるタイミングは、成長期が止まり骨格が決まった段階からをおすすめします。
世の中には、ウエイトトレーニングや体幹トレーニングなどのメソッドが、様々な雑誌や書籍で紹介されています。しかし体格や体質、競技が違えば、トレーニングの方法や順序、負荷のかけ方も異なります。そもそも、成長期を終えて骨格が完成された有名選手と成長期まっただ中の中高生では、コンディショニングの内容が異なるのは当然です。
中高生の未来を見据えた時に、筋肉をつけ過ぎるなどの無理な鍛え方は避けましょう。成長期こそ、まずは"関節可動域"を確保することが大切です。必要以上の筋肉をつけすぎると、関節可動域が狭まり、身体が思うように動かない、という状態になってしまいがちです。
食事についても背伸びは禁物です。トップアスリートを目指して、特定の栄養素や話題のサプリメントだけを摂ればいいのかというと、そんな事はありません。3度の食事の質を整え人間としての健康な身体をつくるという土台を作った上で、今の自分に必要な特定の栄養素を強化することが大切です。
それは生活リズムをしっかりキープできるということです。メジャーリーグの選手なら連戦や徹夜の移動、食事を規則正しく食べられない事も日常的です。プレッシャーやストレスも多く、胃腸が不調な時もよくもあります。睡眠が少なかったり胃腸機能がダウンしたりすると、栄養の吸収や細胞の修復が滞り、結果成長を妨げることになります。
若いうちは生活習慣を確立して、規則正しい生活を送る事が大切です。残念ながら「強いチームで厳しい指導を受けています」という学生ほど、生活リズムが周りとかけ離れている場合が多いのです。それは、かえって選手としての成長を妨げてしまうことにもつながります。
また、スマホやゲームなどの息抜きはリラックスしているつもりでも脳や目を駆使して腕・肩・首を固めているのでやりすぎは逆効果で生活リズムを崩すことになります。スマホやゲームは何時まで"と時間を決めておく工夫をしましょう。
重要なのは、毎日の運動・食事・休養・勉強・睡眠のメリハリをつけて生活リズムを確実につくりあげることです。
酒井リズ 智子さん
米国医師免許に加え、米国NATA認定アスレチックトレーナー、米国ACSM健康運動指導士の資格を保有し、米国の病院勤務の傍、プロスポーツチームコンディショニングでの経験を積む。米国現場での経験を生かし、現在はバスケットボールの田臥勇太選手、サッカー日本代表の川島永嗣選手他、陸上、野球、ゴルフ、卓球、柔道、フットサル、スノーボードなど、日米欧の様々な分野のトップアスリート選手のトータル・コンディショニング(トレーニング・技術・リハビリ・栄養指導・生活習慣矯正)をパーソナルで指導。