人間の身体の中心を走る背柱にゆがみがあれば、肩関節、股関節、膝、足首など、すべての関節に影響が広がります。さらに日常生活における姿勢はスポーツのパフォーマンスにも影響します。
例えば、ソファーでテレビを見ながらくつろぐ際に、左右どちらかに身体をひねりながら毎日座り続けると、バランスが崩れて姿勢が偏ります。真っ直ぐあるべきものが曲がって蓄積されると、競技におけるパフォーマンスの姿勢にも影響します。日常における些細な工夫ですが、座る場所をローテーションさせる事も重要です。
もちろん、自宅はリラックスする場所なので、足を組んでも良いし、楽な姿勢を取るのも大丈夫です。例えば、右足を上に組んだら、その後、同じ時間だけ左足に組み替えましょう。ソファーも左端に1時間座ったら、右端にも1時間座りましょう。身体にクセをつけず、バランスを保つ工夫が必要です。
また、家具の配置を見直すことで、コンディショニングを調整することも可能です。例えば、食事の際にイスとテーブルの高さが合わないと、消化に影響します。姿勢が前のめりになることで胃腸は圧迫され、早くお腹がいっぱいになってしまい、十分な栄養を摂取できません。せっかくの料理が喉を通らないこともあります。とくに成長期は、身体の成長に合わせながらイスとテーブルの高さを調整しましょう。
中高生の頃は、とにかく強くなりたい、イチロー選手や本田圭佑選手みたいになりたいと願うあまり、オーバートレーニングになりがちです。「筋肉を強くしたい」「身体を大きくしたい」という点だけに注目する中高生アスリートは本当に多いのです。
しかし、骨格や体型が急激に変化していく成長期に、必要以上の筋肉をつける事はおすすめできません。強すぎる筋肉が骨の成長を邪魔するからです。筋肉は骨に付いているため、筋肉のパワーを強くしすぎると縮む力がかかり、骨の成長を抑制してしまいます。
また、関節の可動域が狭いと、せっかく筋肉を強化しても、身体を柔らかく動かすことはできません。そして大人になればなるほど、関節はどんどん硬くなっていきます。
ストレッチは関節と筋肉を柔らかく保つために効果的で、一人でも実践しやすい運動です。大人になってから柔軟性を鍛えるのはとても時間がかかるので、成長期である中高生の時期にしっかりやっておくことが大切です。自宅では、腹筋や背筋といった重いトレーニングよりも前に、まず可動域のメンテナンスをすることを第一に考えましょう。
酒井リズ 智子さん
米国医師免許に加え、米国NATA認定アスレチックトレーナー、米国ACSM健康運動指導士の資格を保有し、米国の病院勤務の傍、プロスポーツチームコンディショニングでの経験を積む。米国現場での経験を生かし、現在はバスケットボールの田臥勇太選手、サッカー日本代表の川島永嗣選手他、陸上、野球、ゴルフ、卓球、柔道、フットサル、スノーボードなど、日米欧の様々な分野のトップアスリート選手のトータル・コンディショニング(トレーニング・技術・リハビリ・栄養指導・生活習慣矯正)をパーソナルで指導。