ジュニアスポーツ選手のための スポーツライフマネジメント

Vol.5 アスリートを支える体調管理

第1回から4回まで、ジュニア選手のスポーツライフマネジメントとして、栄養補給、水分補給、体調管理などを取り上げてきました。今回は実践的なお話しを、至学館大学の杉島先生にお伺いしました。
 先生が指導されている、至学館大学レスリング部は、リオオリンピックでメダル獲得の選手を多数輩出されています。現在、大学のクラブをはじめ、実業団やプロチームの栄養サポートをしています。

監修 杉島 有希 先生

  • 至学館大学 健康科学部 栄養科学科 助教
  • スポーツ栄養サポートチーム(SNST)代表
  • 管理栄養士/日本体育協会公認スポーツ栄養士

大学にて教壇に立つ傍ら、スポーツ栄養士として、野球、サッカー、ラグビー、バスケットボール、レスリング、陸上など、各種競技の小学生・中学生のジュニア選手からプロ、日本代表レベルの選手など、約500名の選手に対する栄養サポートを行う。2016年リオ五輪では女子レスリング選手団に帯同し、栄養サポートを担当。

アスリートを指導する中でのポイントは何ですか?

 アスリートであっても、食事や栄養のことを、正しく理解している人は少なく、なかなか実践が難しいのですが、今まで気づかなかったことを理解し、生活の中で実践を続けた結果、意識が変わってくる選手を良く目にします。特に食事は休養、睡眠、精神面などの体調管理に直結しており、ライフサイクルを意識するように指導します。実際には、栄養指導をしても、すぐに結果が出るとは限りませんが、トレーニングとあわせて、長い目で見ていくと必ず結果がついてきます。

TOPICS

アスリートの試合食

競技によっても違いますが、試合前にはパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性がある食品を控えることも大切です。

エネルギー源となる糖質を含むものをしっかり摂りましょう。

普段の食事ではバランス良く食事を摂ることが大切です。

栄養サポートをするシーンはオリンピック効果で増えていますか?

 確かに、リオオリンピックでたくさんの選手がメダルを取り、スポーツへの関心は高まっていると感じます。競技の場面でもスポーツをする環境が整いつつありますし、然るべき指導者が揃うと、生活面のサポートを充実させようとするチームが増え、指導者、保護者からのセミナーの依頼も増えてきています。例えば、シーズンのある競技では、今何をすべきか、練習がハードになる合宿での食事のとり方、ハイシーズンに向けての栄養摂取や水分補給法について講義します。オリンピックへ行く選手や常にトップを目指す選手全体に感じるのは、意識が高く自己管理ができるということ。特に減量が必要な競技では、体重の管理が重要ですが、試合前の急激な減量を、私はすすめません。カラダ作りを指導し、数か月前から調整させ、減量しやすいカラダを作らせます。これらは、至学館大学レスリング部の選手に実践してもらっています。

選手への指導はどのように行われていますか?

 指導している選手と毎日話すのは難しくても、食事内容を写真でチェックしたり、疑問や不安がある場合はメールで連絡が取れるようにして情報共有をしています。そして数か月に1回程度カウンセリングをし、ライフスタイルや今の体調についてアドバイスをします。例えば、12月〜1月はハードなスケジュール後に体調を崩しやすいため、ケガや風邪の予防を中心に話をします。免疫力を高めるための食事や腸内環境を整えるための食事の摂り方についても理解してもらいます。こうして選手は年間のサイクルの中で自分の体調を管理し、状況に応じて実践していきます。

図1 アスリートを栄養面から支える「SNST」

SNSTについて詳しくは、下記サイトへ。
http://ameblo.jp/s-snst/

アスリートを目指すジュニア選手 をサポートする環境は?

 ジュニアの場合、学校の規則に縛られるケースが多くあります。一番カラダが作られるこの時期は昼食の内容、補食など一つ一つが大切です。特に補食では、学校側と話し合って牛乳の自動販売機を設置してもらった例もあります。もし近辺でその環境がない場合、保護者やコーチがきちんと準備することが望ましいと思います。

 ジュニアへの指導は動機づけをしっかりさせるようにします。憧れの選手を目標に、そこを目指すようにさせます。ジュニアの時期から食事を含めた自己管理を意識させることにより、成長してからも自己管理ができるようになります。保護者が全て管理をしてしまうと、大人になってから困ることになってしまいます。

食事については?

 成長段階の子どもには、個人差がありますが、競技によって目指すカラダや食事の摂り方も異なります。各々の目標に沿った食事を、正しく摂ることによって1年ないし2年後には競技成績に差がついてきます。食事管理を習慣化するためにも子どものうちの早ければ早い段階でスタートすると良いでしょう。

 将来、オリンピックに出たり、アスリートとして活躍を目指すのであれば、競技における技術や体力づくりだけでなく、今のうちからカラダ作りを意識して、食生活を管理していきましょう。「意識すること」が、きっと将来につながっていきます。

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